『バイオハザード・ザ・ファイナル』 ― 軍需産業からカルト教団へ。







邦題 : バイオハザード・ザ・ファイナル
(原題 : Resident Evil: The Final Chapter)
公開 : 2016年
監督 : ポール・W・S・アンダーソン
出演 : ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、
イアン・グレン、ショーン・ロバーツ、
ルビー・ローズ、イ・ジュンギ、ローラ 他




 タレントのローラが出演するということで話題になった『バイオハザード・ザ・ファイナル(原題 Resident Evil: The Final Chapter)』。


 ゲームを原作として独自にストーリーを組み立てた本シリーズだが、この最終作でなんと6作目になる。一体どのような形で完結したのか、早速紹介しよう。


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 …全くもって残念なことだが、これまでのシリーズ全作を観てきた自分にとって、本作は納得し難いものとなってしまった。何故このようなことになってしまったのか、制作陣を問い詰めたいほどだ。


 まず、毎度おなじみとなった冒頭のアリスのモノローグだが、今回のそれは誰も予想していないものだった。


 一点目。製薬会社アンブレラの成り立ちが説明されるのだが、信じられないことに、それはこれまでの設定を無かったことにしてしまうものだった。


 これまでの説明では、チャールズ・アシュフォードという科学者が娘のアンジェラ・アシュフォードの筋ジストロフィーを治療するためにTウイルスを開発し、それが製薬会社アンブレラへと発展していったということであった。


 それが今作では、ジェームズ・マーカスという人物が娘のアリシア・マーカスのプロジェリアを治療するためにTウイルスを開発したという、これまでと全く違う設定に何の前触れもなく変更されていたのだ。


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 二点目。前作『バイオハザードV リトリビューション』のラストでは、人類最後の生き残りの者たちが敵味方に関係なくホワイトハウスに集結し、いよいよゾンビ軍団との最終決戦を迎えるという終わり方をした。


 ところが、実はそれはウェスカーの罠で、なんとアリス以外は全滅してしまったということを、たった数十秒の説明で片付けられてしまうのだ。


 前作で共闘することになったエイダ・ウォン、レオン・S・ケネディ、洗脳が解けて仲間に戻ったジル・バレンタイン、わざわざリッカーの巣まで助けに行ったアリス・クローンの娘ベッキーという、あのような地獄を切り抜けて集った四人が、そのため今作には登場しない。


 …信じられない暴挙である。ここまで観客を突き放した作品があっただろうか。



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 しかし、僕が思うに真の問題は、ストーリー設定の勝手な変更のために、前作までのストーリーや登場人物の存在意義が無駄になってしまっているということだ。


 映画版バイオハザードのそもそものストーリー設定は、一作目『バイオハザード』と続編である二作目『バイオハザードII アポカリプス』によって明確に説明されている。


 つまり、アンブレラの究極の目標は「Tウイルスによって人間の肉体を改造し、強力な戦闘能力を持つ人間兵器を開発・販売する」ということだったはずである。


 だから二作目の敵であったティモシー・ケインは、一作目のラストで拉致したアリスとマット・アディソンにTウイルスを投与し、マットに至っては外科手術でネメシスに肉体改造までし、戦闘データを取るために二人を戦わせたわけだ。


 それが今作では、アンブレラの目的は「選ばれた者以外をゾンビにして人類を滅ぼし、浄化された世界に理想郷を築く」という、ノアの箱舟よろしく、散々使い古された終末思想を持ち出してきたのだ。


 制作陣に問いたい。ネメシス計画はどこへ行ったのか。そして、マットの犠牲は何だったのか。


 肉体は改造されても精神までは支配されず、アリスを助けて死んでいったマットの自己犠牲精神。この感動的なシーンが、今作によって完全に無意味なものにされてしまったのだ。


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 アイザックス博士が黒幕で、これまでの彼はクローンだったというような事実は、ストーリーそのものに矛盾を生じさせているわけではないため、特に問題とは思わない。


 ウェスカーがクビになった瞬間にレッドクイーンに攻撃された、ロボコップそのままのシーンなどは、映画ファンを楽しませるオマージュと判断し、好意的に受け取ることにした。


 とにもかくにも、アンブレラという物語の核になる存在を、生物兵器開発という死の商人から、人類浄化という宗教教団に変えてしまったことが、諸悪の根源だったと言えるだろう。


(終)






600点の特典ポイントで本作『バイオハザード・ザ・ファイナル』が無料。
2018年3月19日 23:59まで配信。


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