『キング・コング』 ― 脚本家?いいえ、アクション俳優です。







邦題 : キング・コング(原題 : King Kong)
公開 : 2005年
監督 : ピーター・ジャクソン
出演 : ナオミ・ワッツ、ジャック・ブラック、
エイドリアン・ブロディ、アンディ・サーキス 他




 人気急上昇中のトム・ヒドルストンが主演のリメイク作品、『キングコング: 髑髏島の巨神(原題 Kong: Skull Island)』が話題になっているが、映像ソフト化されるまでは何ヶ月か時間があるので、過去作品を振り返ってみたい。今回は2005年版の『キング・コング』を取り上げる。


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 この2005年版は、『ロード・オブ・ザ・リング』と『ホビット』シリーズの監督であるピーター・ジャクソンがメガホンを取っただけあって、映像は凄まじいリアルさと迫力である。その点は全く文句の付けようがない。


 中でも秀逸なのが巨大ムカデで、ありとあらゆる生物の中でムカデが一番嫌いな僕は、思わず卒倒しかけたほどだ。『ロード・オブ・ザ・リング』にもムカデが出てきたが、この監督は余程好きなのだろう。


 そして、キングコングのモーションキャプチャーを担当したのは、上記シリーズ6作品に登場したゴラム役を務め、現在は『猿の惑星』の新シリーズでシーザーを務めているアンディ・サーキスである。その動きたるや見事というほかない。


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 本作について個人的に言いたいことがあるとすれば、それは人物設定である。


 ヒロインであるアン・ダロウ役のナオミ・ワッツの年齢が当時話題になっていたが、僕は別におかしいとは思わなかった。37歳ということだったが、やや童顔の女性なので普通に20代に見えた。


 問題なのは、いや、問題というか無理があると思ったのは、 エイドリアン・ブロディが演じた相手役の脚本家ジャック・ドリスコルである。


 1933年のオリジナル『キングコング』のヒーロー役は、名前は同じジャック・ドリスコルでも、髑髏島まで向かうために雇った船の、若くたくましい船乗りの男だった。僕にとっては、どれよりもこの設定が一番しっくり来る。


 絶えず世界を旅して回り、荒れ狂う海に揉まれた屈強で勇敢な船乗りだからこそ、巨大な獣や虫が相手でも怯むことなく戦えたし、銃火器の扱いにも手慣れていたし、サバイバルの知識にも長けていたわけだ。


 それがなぜ、日常生活の中ではアクションなど無縁であろう、ひょろっとした脚本家のやさ男という設定に変えてしまったのか、ここが理解に苦しむ。



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 なるほど、確かに彼は最初から常に冷静で観察眼の鋭い人物ではあった。が、あくまでそれは平時のことであり、訓練も受けていない民間人が、極限状態において臨機応変に動き回れることの理由にはならないはずなのだ。


 人間など無力でしかない環境にいきなり放り込まれ、そこで恐竜や巨大昆虫を相手にあそこまで戦えるなどというのは、いくらなんでも説得力に欠ける。もう少し何かそれらしい背景がなければ駄目だろうと思う。


 例えば、趣味で狩猟をしており、ライフル銃の腕前はプロ級だというような設定にしておき、各人物の出発前の日常のシーンを見せるようにして、その中で狩猟の様子を描くといったことも可能だったはずである。


 そうすれば、持ち前の狙撃能力で巨大な怪物どもを狙いも正確に撃ちまくる、ということが違和感なくできたはずだ。


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 脚本家という非肉体派の人物が、あのような地獄のアクション世界に放り込まれて、骨折の一つもせずに女性の救出から島の脱出まで完遂できてしまうというのは、やはりどうしても無理がある。


 そこさえ説得力を持たせる描き方ができていれば、この作品はもっと高い評価を受けていただろうと思う。


(終)






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